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不動産トラブル事例

不動産トラブル事例

離婚や相続など売却をされる方の理由は様々で、先行きがわからないためにご不安に思われている方も多いのが現状です。不動産を売却するというご経験がない方でも安心して頂けるように、過去の不動産にまつわる事例をご紹介しております。

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事例①_R
専任媒介契約を締結したのに、物件のレインズ登録がされていない事が判明した事例

所有する物件の売却の媒介(仲介)を宅建業者に依頼し、専任媒介契約を締結した。ところがいつまでも買い手がつかないでいたところ、この業者がレインズに物件登録をしていないことが判明した。


担当者コメント

専任媒介契約や専属専任媒介契約は、売主が特定の不動産会社に対して、物件の売却の媒介を委託する契約です。専属専任媒介契約では売主は他の不動産会社に物件の売却を依頼することができません。専任媒介契約を締結した宅建業者は7日以内に、専属専任媒介契約を締結した宅建業者は5日以内に、契約の相手方を探索するための宅建業者間の情報ネットワークシステムである「レインズ」(指定流通機構)に、物件登録をすることが義務付けられています。

この登録は、物件情報を広く公開し、買い手を見つけるための重要な手段です。もし不動産会社がこの義務を怠った場合、契約違反となります。

また、宅建業者はレインズに物件情報を登録した後、登録済証を売主に遅滞なく交付する義務があります。この登録済証には、物件の売却価格、所在地、面積など、レインズに登録されている物件情報の概要が記載されており、売主はこれをもって物件がレインズに登録されていることを確認できます。 専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだ場合、宅建業者は売主に対して定期的に業務報告を行う義務もあり営業活動や引き合いの状況などを報告しなければなりません。

Voice02

事例②_R
新築住宅購入時の航空機騒音賠償責任に関する裁判の概要

ケース概要

原告ら(3名、以下総称してXという)は、1993年7月から8月にかけて、売主であるY社から土地付き戸建住宅(計6戸)を4000万円から4450万円で購入した。 問題の土地は、米軍基地の北7.5キロに位置し、航空機の飛行経路の真下にあり、基地からの離着陸による航空機騒音が顕著な地域です。 Yは、物件を売却する際に、Xに対し、良好な居住環境であることを説明したが、航空機の騒音等の問題については触れなかった。 Xさんは入居後、防音工事に580万~870万円を費やした。 1996年、Xは、Yが不動産売買契約に付随する義務として宅地建物取引業法第47条第1項に基づく重要事項告知義務に違反し、Yには本件土地が航空機の飛行経路の直下に位置し、騒音等が著しい地域にあること等を調査しXに知らせる義務があったにもかかわらず、これを怠ったとして、Yを相手方として損害賠償を求める訴訟を提起した。


判決の要点

(ア)宅地建物取引業者は、法第35条に規定する重要事項について専門的な見地から調査し、購入者に説明し、又は告知する義務を負っているが、公害問題は同条に規定する説明義務の対象外であり、専門的な見地から説明し、又は告知すべき事項とは言えない。

(イ) 場合によっては、職務上の注意義務の観点から告知義務が生じる可能性もあるが、本件のような航空機騒音の場合には、Xは事前の調査や立入検査等を通じて契約締結前にその旨を把握していたはずである。また、基地周辺の騒音は周知の事実であり、騒音の程度は時間的に限定されており、人によって感じ方も異なる。

(ウ)以上の点を考慮すると、本件においては、Yが騒音の存在を故意に隠蔽していたり、Xが特別な要請を行ったりする等の特別な事情がない限り、Yには開示すべき法的義務はない。   したがって、YはXに対して不法行為または契約違反の責任を負わない。


結論

この判決は、「特に人によって感じ方が異なる公衆騒音問題に関しては、特別な事情がない限り説明義務はない」としている。一方で、「航空機騒音は空港周辺の広範囲に影響を及ぼすため、全ての地域で説明しなければならないとは言えないが、騒音が著しく、通常の生活を維持するのに防音対策が必要なときは、説明しなければならない」と一般的に考えられている。

担当者コメント

この事例は、特に騒音問題が発生する可能性のある地域では、不動産を購入する前に徹底的な調査と検査を実施することの重要性を浮き彫りにしています。 不動産業者は購入者に情報を開示する一定の義務を負っていますが、物件に影響を及ぼす可能性のあるすべての潜在的な問題について責任を負うわけではありません。 騒音やその他の環境問題に関連する紛争の場合は、関係する具体的な権利と義務を理解するために法律顧問に相談することをお勧めします。

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事例③_R
マンションの向きの虚偽広告に関する裁判の概要

ケース概要

原告ら(13世帯、以下総称してXという)は、1994年5月から10月にかけて、販売代理店A(Yの子会社)を通じて売主Y社から新築マンションを購入し、1995年4月に入居した。 Yは、販売過程において、パンフレットに「全戸南向きで採光の良い明るいリビング・ダイニング」と記載し、新聞広告やチラシにも「全戸南向き」「全戸南向きの明るい居室」と記載していた。チラシの敷地図には方位が示されており、バルコニーは真南から西に約40度向いていた。しかし、本件マンションのバルコニーは真南から西に62度11分向いていた。 1998年2月、Xは、マンションが南向きと宣伝されていたが実際は西62度向きだったため、日光が減り、光熱費が増加し、資産価値が低下したとして、 Yに対して契約違反または不法行為を理由に損害賠償を求める訴訟を起こした。  


判決の要点

(ア)不動産業者は、購入者の意思決定に重要な事実について、虚偽の陳述や説明をしないという信義誠実の原則に基づく二次的義務を負っている。これは、購入者が現地視察によって方向性を確認することができない未完成のマンションの場合に特に当てはまる。したがって、不動産業者は、マンションの方向性について虚偽の陳述や説明をしないように注意するという信義誠実の原則に基づく二次的義務を負っている。   (イ) Yが作成したパンフレット等における「南向き」との記載は、本件マンションの向きが西62度であることから虚偽の説明である。また、チラシにおける「南より西40度」との記載も、本件マンションの向きが南向きよりも西向きに近いことから虚偽の説明である。さらに、買主に建築図面の精査を求めることはできないから、Yは信義誠実の原則に基づく二次的義務に違反している。  


結論

不動産広告における虚偽の記載や説明は、信義誠実を重視する宅地建物取引業法の業務取扱原則や誇大広告等の禁止に違反したり、「不動産仲介業公正競争規約」に違反したりするおそれがあるが、本件は信義誠実の原則に基づく売主の二次的義務が認められた事例である。

担当者コメント

「青田売り」マンションの場合、モデルルームを視察しても入居後にしか確認できない部分が多くあります。 不動産業者は、正確な情報を伝えること、虚偽の記載や曖昧な説明は極力避けること、確認できないことがあればそのまま状況を説明することが大切だと認識する必要があります。


Voice04

事例④_R
ペットに関する虚偽の告知をしたマンション販売事件の概要

ケース概要

不動産業者Yは当初、新築マンションをペット禁止物件として販売した。 その後、Y社はペット可のマンションとして販売を開始した。 マンション管理組合が発足した後、ペットを飼い続けられるのは現在の飼い主のみとすることになり、管理規約案にペット禁止条項が追加された。 ペットを嫌う買主X1とペットを好む買主X2は、それぞれYから「ペット禁止」と「ペット可」という異なる説明を受けて入居した。X1とX2はともに困惑し、Y社を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こした。裁判所はX1とX2の双方に有利な判決を下した。


調査

行政調査において、Y社は当初、ペット禁止としてマンションを販売したが、後にペット可と説明を変更したことを認めた。また、管理組合の設立後にペットの飼育が制限される可能性があることを認識していたことも認めた。 X2 の訴訟の判決では、Y 社は X2 との売買契約の時点で、ペット可物件として販売したことについて以前の購入者から苦情をすでに受けていたことが判明しました。また、Y社 は、X2 がペット禁止の理解のもとで物件を購入し、将来的にペットを飼えなくなる可能性があることも知っていました。さらに、裁判所は、X2 がマンション購入の決定においてペットの飼育を重要な要素と見なしていたことを認めました。


行政処分

行政庁は、ペット飼育が購入者、特に早期にマンションを購入した購入者にとって重要な要素であることを認識していたにもかかわらず、Y社が前居住者からペット飼育の承諾を得ていないことを購入者に伝えなかったことは宅建業法に違反していると判断し、Y社を5日間の業務停止処分とした。


担当者コメント

不動産業者には、ペットの飼育に関する潜在的な制限や制約を含め、正確で真実の情報を買い手に提供する責任があります。

ペットに関するポリシーを偽って伝えると、買い手と売り手の両方に深刻な結果を招く可能性があるため、不動産業者は保証できない主張をすることには注意する必要があります。 不動産業者にとって、誤解や潜在的な紛争を避けるために、特にペットの飼育のようなデリケートな問題に関しては、買い手と売り手とのオープンなコミュニケーションを維持することが不可欠です。


Voice05

事例⑤_R
中古マンションの購入者が階下の住人の反対により床の張り替えができず、仲介業者と売主に損害賠償を求めた事例

概要

買主(X)は、2006年6月に売主(Y)から仲介業者(Z)を通じて中古マンションを購入し、7月に入居した。 X は階下の住人に床張り替えの計画について伝えたが、強い反対に遭った。その後、X は、Y も階下の住人から床張り替え工事の中止を求められ、それに同意していたことを知った。 8月、XはYとZを伴って再度入居者を訪問したが、入居者の怒りはエスカレートするばかりで、床の問題にかかわらず入居は不可能との結論に至った。 Xは、Yに対し、売買契約の解除、原状回復費用(初期費用、登録料等)の負担、契約解除によって生じた損害の賠償を要求した。 Y は、階下の住人が床工事に反対していることを X に知らせていなかったことを認めたが、床の張り替えが X の購入条件であることを知らされていなかったと主張した。Yは物件を買い戻すことに同意したが、修復費用の負担を Z が分担すべきだと主張した。 Zは、マンション管理会社の重要事項調査書には、床材の品質に条件がある旨が記載されているのみであり、重要事項説明の際に特に説明すべき事項があるかどうかYの社員に確認したところ、「特段の事項はない」との回答であったと主張し、購入条件に問題はないと判断した。


調停と和解

3 人の調停人が 4 回の調停を実施しました。 Xは、階下の住人が床工事に反対していることをYがXに伝えなかったため、Yに売買契約を解除し、登録料を支払うよう要求した。また、Zに仲介手数料を返還するよう要求した。 Yは契約解除とそれに伴う原状回復費用として約200万円を支払うことに同意したが、Zにもその費用を負担するよう主張した。 Z社は仲介手数料をX社に返還することに同意したが、原状回復費用の80%をY社が負担し、20%をZ社が負担すべきだと主張した。 調停人は両当事者にさらなる検討を求めた。Yは引き続きZと原状回復費用を平等に分担することを主張し、その額を調停人の裁量に委ねた。Zは仲介手数料に関する調停人の判断に同意したが、費用分担率については調停人の決定に委ねた。 調停人は、和解金額を250万円とし、 YとZの費用負担割合を50:50とする和解を提案し、三者ともこの提案を受け入れ、和解が成立した。


担当者コメント

不動産業者には、物件の使用や価値に影響を与える可能性のある潜在的な問題を含め、すべての関連情報を買い手に開示する責任があります。 購入者は、不動産を購入する前に自分のニーズと好みを慎重に検討し、潜在的な制限や制約を認識しておく必要があります。 紛争が発生した場合、調停は訴訟に頼らずに双方が納得できる解決に至る効果的な方法となります。


Voice06

事例⑥_R
ポンプ室の騒音による契約無効訴訟の概要

ケース概要

1996年1月、Xの妻は建築中のマンションの販売センターを訪れ、営業担当者Aからパンフレットや図面一式とともに説明を受けた。 気に入った203号室の図面に「貯水槽」の表記があったのを見て、 Xさんの妻は担当の販売員に騒音はないか尋ねたところ、以前は騒音があったが今はないと言われた。 重要事項説明書には、共用部分に貯水槽、高架水槽のほかにポンプ室があると記載されていたが、図面一式中の1階平面図にはポンプ室に関する記載はなかった。Xの妻は安心して、同月末に5160万円で当該部屋を購入した。 同年8月、X一家は入居したが、部屋の下から昼夜を問わず滝のような音が聞こえるため、Yに対し対策を求めた。Yと施工会社が数度にわたり防音・吸音工事を行った結果、音は小さくなったが、Xは十分ではないとして更なる対策を求めたため、係争となり、 Xは保証義務違反、錯誤、詐欺による解除を理由に、売買代金相当額の返還を求める訴訟を提起した。


判決の要点

(ア)本件ポンプ室の騒音は、若干改善されているものの、依然として騒音レベルに係るJIS規格のクラス1またはクラス2を超えており、ポンプの消耗部品の劣化により異常な騒音が発生している場合には、クラス3に該当し、通常の静穏状態にある居住環境であるとはとても言えない。部品の交換には管理組合理事会の決議が必要であり、Xの判断のみで交換することはできない。  

(イ)売買契約当時のXの妻と担当販売員とのやり取りから、Xの動機は平穏な生活が送れる住宅の購入にあったことがわかる。騒音は依然として存在するから、Xの意思表示には法律行為の要件を誤るものであり、本件売買契約は無効である。


担当者コメント

騒音を理由とした契約解除の紛争は瑕疵担保責任の問題として扱われることが多いのですが、騒音の感じ方には個人差があり、騒音の程度や質も様々であるため、瑕疵に該当するかどうか、契約解除が認められるかどうかの判断が難しいケースが多くあります。   本件では、騒音の程度等に加え、交渉過程において購入者の動機が明確に表明されていたことから、法律行為の要件を誤認したとして契約が無効とされました。


Voice07

事例⑦_R
マンションの建設計画について売主と仲介業者から知らされていなかったとして、買主が売主と仲介業者に物件の買い戻しや損害賠償を求めた事例

事件の概要

買主(X)は8名で、仲介業者(Z)を通じて売主(Y)から新築マンションの12階建ての2階から9階部分を購入し、入居した。 しかし、入居から4年後、南側の空き地に9階建てのマンションが建設され、Xさんの陽光は奪われてしまいました。 Xは、南側隣地の地主から高層ビル建設計画について事前に伝えられていたにもかかわらず、Y及びZがこれを知らせなかったことは重要事項説明義務に違反しており、知っていれば購入しなかったと主張し、Y及びZに対し、当該物件の買い戻しか損害賠償を求めた。 これに対し、Yは、近隣説明等の過程で南側隣地の地主から建物を建設する予定である旨の申し出があったが、建築計画が確定しておらず、購入者に説明すると誤解を招く恐れがあるため、説明する必要はないと判断したと主張した。一方、Zは、Yから隣地の地主によるマンション建設計画については聞いておらず、重要事項の説明をきちんと行い、購入者の署名捺印も得ているので問題はないと主張した。


調停と和解

調停は3人の調停委員により9回にわたり行われた。調停の過程で、Xは、パンフレットに載っていた4面採光が気に入って購入したのであり、事前に知らされていれば購入していなかったと主張し、物件の買い戻しか各世帯に200万円以上の損害賠償を求めた。 これに対し、Yは、マンション建築当時、隣地の地主から当該更地に建物を建てる予定であることは聞いていたが、いつまでに建てるのか、何階建てにするのかなど具体的な建築計画については知らされておらず、説明する義務はなかったと主張した。また、Yは、当該物件を買い戻すことはできないが、Xに迷惑をかけたため、弔慰金として総額約200万円を支払うことを検討していると述べた。 Z社は、売買当時、隣地の地主がマンションを建設するなどという話はY社から聞いておらず、役所で近隣の建設計画を調査し、工事看板も確認したが何も発見できなかったと主張した。しかし、Z社は、弔慰金として総額約60万円を支払う用意があると述べた。


和解条件

調停人は、Xに対し、商業地であれば空き地があれば建物が建つことが予想されるが、実際に4年間住んでいたため買戻しは現実的ではなく、金銭による解決が望ましいと説明した。Yは、Xに270万円、Zに60万円の合計330万円を支払うことを申し出た。この提案にはY、Z双方が納得し、Xも同意したため和解が成立した。


担当者コメント

不動産業者には、物件の使用や価値に影響を与える可能性のある潜在的な問題を含め、すべての関連情報を買い手に開示する責任があります。 購入者は、不動産を購入する前に自分のニーズと好みを慎重に検討し、潜在的な制限や制約を認識しておく必要があります。 紛争が発生した場合、調停は訴訟に頼らずに双方が納得できる解決に至る効果的な方法となります。


Voice08

事例⑧_R
近隣トラブルにより居住不可能となった物件の購入者に損害賠償が認められた裁判の概要

ケース概要

売主Yは1999年10月に問題の不動産を購入しました。 Yは、西隣のAから、子どもがうるさい、洗濯物に水をかけられたり泥をかけられたりしているなどの苦情を受けており、町内会長や警察にも相談していた。また、Aの敷地との間にトタン塀を設置したり、 2階バルコニーにトタンを取り付けたり、東側に子ども部屋を作るなどの対策も講じていた。

2001年9月頃、Yは不動産業者Zに物件の売却を依頼し、Xは不動産業者Bに購入の仲介を依頼した。 2002 年3 月 3 日の朝、Z と B は別の購入希望者とともに物件を訪問しました。Aが大声で苦情を言い、取引は成立しませんでした。しかし、その日の午後、X が子供とともに物件を訪問した際、A から苦情はありませんでした。 Xは、Zからの説明や「重要事項説明書」や「物件状況報告書」に記載された「西側居住者から騒音等の苦情があった」という記載に基づき、 5月に売買契約を締結し、代金2,280万円を支払い所有権移転登記を行った。しかし、6月にXが子どもを連れて物件を訪れたところ、Aから「うるさい」と言われ、警察を呼ぶ事態も発生。 Xは当該物件での居住を断念し、YとZに対し告知義務違反を理由に不法行為による損害賠償請求を申し立てたが、第一審裁判所は請求を棄却した。


判決の要点

(ア)売主が不動産業者に仲介を依頼したとしても、信義誠実の原則から重要な事項について虚偽の告知をすることは許されず、買主を誤認させることも許されない。売主には、このような事項について説明義務があると解するのが相当である。Yは、Xに対し、入居後の隣人トラブルや3月3日朝の出来事について説明せず、また、最近は隣人トラブルがないとの誤解を与えた。したがって、Yは、告知義務に違反した。


結論

近隣トラブルの内容は多岐にわたり、実務上はプライバシーへの配慮も必要となるが、客観的事実をそのまま記載するだけでは法的リスクはないとして仲介業者の告知義務違反を認め、裁判所はYとZに対し、Xに対して、購入価格の20%に相当する額の損害賠償を支払うよう命じた。

担当者コメント

不動産業者は、買主の居住に支障をきたすおそれのある客観的事実を知ったときは、その客観的事実を説明する義務がある。仮に、ZがBに連絡して、3月3日朝の出来事をXに伝えるように伝えていたとしても、Zの告知義務は果たされていないと思われます。


Voice09

事例⑨_R
遺言執行における不動産売却価格の適正性と相続人の損害賠償請求をした事案

事案の概要

本件は、被相続人であるAさんが遺言でBさんに財産全てを遺贈し、Cさんを遺言執行者として指定していたところ、CさんがAさんの不動産をDさんに低額で売却したため、相続人であるEさんがCさんらに対して損害賠償請求をした事案です。


争点

Cさんによる不動産の売却価格は、適正価格であるか?Eさんの損害賠償請求は、認められるか?


判決の概要

東京地裁判所は、次のとおり判示しました。 Cさんによる不動産の売却価格は、当時の市場価格を下回るものであったが、著しく不当に低いとは認められない。Eさんの損害賠償請求は、棄却される。


判決の理由

1. 不動産売却価格の適正性 不動産売却価格の適正価格は、鑑定士による鑑定評価額、近隣同等の物件の取引事例、当時の市場動向などを総合的に考慮して判断されるべきである。本件の不動産売却価格は、鑑定士による鑑定評価額よりも低かったものの、近隣同等の物件の取引事例と比較すると、必ずしも著しく低いとは言えない。また、Cさんは、売却活動において十分な努力をしたことが認められる。2. 損害賠償請求の棄却理由 Eさんは、相続財産の管理状況について十分な情報を与えられていなかったことや、Cさんに対して適切な助言を求めていなかったことなどから、Cさんを信頼して売却を承諾したものと認められる。


詳しい事案の内容と判例はこちら

東京地裁判決 平成28年12月14日

担当者コメント

本判例は、遺言執行における不動産売却価格の適正性判断基準について示唆を与えた事例として注目されています。 近年、遺言執行を弁護士等に依頼するケースが増加しており、遺言執行者が被相続人の財産を適正に処分するかどうかが問われるようになっています。本判例は、**遺言執行者が不動産を売却する場合には、鑑定評価額、近隣同等の物件の取引事例、当時の市場動向などを総合的に考慮し、著しく低い価格で売却しないよう注意すべきことを示唆したものです。 ただし、本判例は、個々の事案の具体的事実関係に基づいて判断されたものであることに留意する必要があります。

Voice10

事例⑩_R
認知症患者における判断能力の認定事案

本件は、認知症を患っていたBさんが、自身の建物を売却する際に、判断能力を有していたかどうかが争われた裁判です。


争点

Bさんは、認知症により事理弁識能力が低下していたか。Bさんは、建物の売却契約締結時にその内容を理解し、意思決定を行う能力があったのか。


判決の概要

東京地裁判所は、Bさんが認知症により事理弁識能力が低下していたことを認めつつも、それを欠く常況にあったとは認められないとして、Bさんの判断能力を認めたのです。


判決の理由

裁判所は、以下の点を根拠として、Bさんの判断能力を認定しました。

Bさんは、日常生活においては自立しており、適切な判断を行うことができていた。建物の売却について、Bさんは自ら積極的に検討しており、複数の業者から見積もりを取っていた。売却契約の内容についても、Bさんは十分に理解しており、納得した上で署名捺印していた。専門医による診断結果によっても、Bさんは軽度認知症であり、意思能力を完全に欠いているとは認められなかった。

担当者コメント

本判例は、認知症患者であっても、程度によっては判断能力を有していることが認められることを示した画期的な判例と言えます。 従来の判例では、認知症患者は判断能力を欠いていると推定される傾向がありましたが、本判例は、個々の患者の具体的な状況を丁寧に分析し、判断能力を判断するべきことを示唆したものです。


詳しい事案の内容と判例はこちら

東京地裁判決 平成21年11月10日

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